駅前旅館
監督 | 豊田四郎 |
製作 | 佐藤一郎 |
脚本 | 八住利雄 |
【配役】
- 生野次平 ……………. 森繁久彌
- 高沢 ……………. 伴淳三郎
- 小山欣一 ……………. フランキー堺
- 柊元三治 ……………. 森川信
- お浜 ……………. 草笛光子
- 梅吉 ……………. 藤木悠
- お辰 ……………. 淡島千景
- お京 ……………. 三井美奈
- お松 ……………. 都家かつ江
- 春木屋番頭 ……………. 多々良純
- 杉田屋番頭 ……………. 若宮忠三郎
- 於菊 ……………. 淡路恵子
- 相田先生 ……………. 左ト全
- 広見 ……………. 藤村有広
- 保健の先生 ……………. 浪花千栄子
- 女の先生 ……………. 若水ヤエ子
- カッパのボス ……………. 山茶花究
- カッパA ……………. 大村千吉
- カッパB ……………. 西条悦朗
- カッパC ……………. 水島真哉
【あらすじ】ネタばれあり
上野駅前にある柊元旅館の番頭・生野次平は三十年の経験をもつ「お帳場様」である。変貌を続ける上野界隈で柊元旅館は、旅行会社から斡旋された修学旅行の団体客でごったがえしている。その中で、馴染みの旅行社の添乗員・小山が忙しく中学生をさばいている。次平は客としてやってきた山田紡績社長一行の中のある女客に二の腕をつねられた。その女客は女中のお京に伝言を残すと発っていった。
次平には気の合った番頭仲間が四人いた。そのうちの高沢に尻尾をつかまれ、今度の慰安旅行の幹事にされた。その役は艶聞を立てた者に振りあてられることになっていたのだ。馴染みの飲み屋・辰巳屋のお辰のところでその行先を江ノ島と決めた。夏の江の島には全国から番頭たちが客引きの腕をみがきにくる。昔、ここで次平や高沢は腕を張り合ったものだ。
次平は彼をつねった女のことをやっと思い出した。彼女は於菊という 江ノ島時代の旅館の豆女中だった。間もなく、例の山田紡績の女工たちの団体がやってきた。於菊が保健係の先生と共に引率していた。次平は席を設けて於菊と会ったが、「旅の恥はかき捨てというような気持……」といった於菊の言葉が彼のカンにさわった。社長の妾で工場の寮長に納まって満足気な女の手前勝手だ。「お前、宿へ帰んなよ」と突き放してしまう。
その頃、下級旅館の強引な客引き・カッパの連中が格元に泊った女学生三人を怪我させた。次平は主人から怒鳴られ、小山は自分の客から怪我人が出てクサった。次平は一計を案じ、上野駅前浄化運動を始め、カッパ連中を締め出す看板を一帯にめぐらした。本部は辰巳屋に置いた。すると、カッパ連は次平を出せと柊元に押しかけた。困っているお内儀を助けようと、次平は暇乞いの口上を述べたが、主人がそれを利用し、本当に彼をクビにしてしまった。彼はさっと最後の客引きの手際を見せると、まだ自分を必要としてくれる場所へ向かうのだった。その夜、小山もお京を連れて柊元を出、大阪を目指した。次平は追ってきたお辰と一緒に日光行の二等車に収っていた。住み慣れた上野の灯がのろのろと二人の目前を動いて行った。
※「あらすじ」はキネマ旬報データベースの内容を元に誤記の修正や加筆を行いました。